わだち歯科シニア歯科の院長玉本です。
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歯ぎしりや食いしばりは、多くの人が無意識のうちに行っている習慣の一つです。特に睡眠中の歯ぎしりは自覚しにくく、朝起きた時に顎が疲れていたり、家族から指摘されたりして初めて気づくケースも少なくありません。また、日中の仕事や勉強に集中している時に、気付かないうちに強く歯を噛み締めている人もいます。
しかし、歯ぎしりや食いしばりは単なる癖ではなく、歯や顎、さらには全身へさまざまな悪影響を及ぼす可能性があります。
通常、食事をする際に歯へ加わる力は体重程度といわれています。しかし歯ぎしりや食いしばりが起きると、その何倍もの力が継続的に歯へ加わることがあります。人によっては数十キログラムから100キログラム近い力が発生するとも考えられており、これは歯や歯周組織が本来想定している負荷を大きく超える場合があります。
本来、歯は食べ物を噛むための器官です。硬い食べ物にも耐えられるよう設計されていますが、上下の歯同士を強く擦り合わせたり、長時間圧迫したりすることは想定されていません。
そのため、歯ぎしりや食いしばりが続くと、歯の表面がすり減ったり、細かな亀裂が入ったりすることがあります。また、歯そのものだけでなく、歯を支える骨や歯ぐきにも負担が蓄積していきます。
問題なのは、多くの場合、症状が徐々に進行することです。
虫歯のように目立つ穴が開くわけではなく、強い痛みも出にくいため、自覚しないままダメージが蓄積していくことがあります。
その結果、ある日突然歯が欠けたり、被せ物が外れたり、顎関節に痛みが出たりして初めて問題が発覚することもあります。
近年ではストレス社会の影響もあり、歯ぎしりや食いしばりを抱える人が増えていると考えられています。
また、パソコン作業やスマートフォンの使用中に無意識に歯を食いしばる「覚醒時ブラキシズム」も注目されています。
つまり、睡眠中だけではなく日中にも歯へ負担がかかる機会が増えているのです。
歯ぎしりや食いしばりは見た目では分かりにくい問題ですが、歯の寿命に大きく関わる重要な習慣です。
まずはその危険性を理解し、自分自身に当てはまる症状がないか確認することが大切です。
◆ 歯ぎしりによって歯がすり減る仕組み
歯ぎしりによる代表的なダメージの一つが歯の摩耗です。
歯の表面はエナメル質という非常に硬い組織で覆われています。
エナメル質は人体の中でも最も硬い組織ですが、永久に摩耗しないわけではありません。
上下の歯が長期間強く擦れ合うことで、少しずつ削られていきます。
特に睡眠中の歯ぎしりでは無意識の状態で強い力が加わるため、自分で力を調整することができません。
その結果、歯の先端が平らになったり、前歯の長さが短くなったりすることがあります。
また、エナメル質が失われると内部の象牙質が露出します。
象牙質はエナメル質より柔らかいため、さらに摩耗が進行しやすくなります。
加えて、冷たいものや甘いものがしみる知覚過敏が起こることもあります。
歯の摩耗は一度進行すると自然には元へ戻りません。
そのため、早期発見と対策が重要になります。
◆ 食いしばりが引き起こす歯の破折と亀裂
歯ぎしりや食いしばりによるダメージは、単なる摩耗だけではありません。
強い圧力が繰り返し加わることで歯に亀裂が入ることがあります。
歯は硬い組織ですが、過度な力に対しては決して無敵ではありません。
特に神経を取った歯は内部の水分量が減少しているため、健康な歯よりも割れやすくなる傾向があります。
また、大きな詰め物や被せ物が入っている歯も負担が集中しやすくなります。
初期段階では目に見えない細かなヒビですが、徐々に進行すると歯が欠けたり割れたりすることがあります。
場合によっては抜歯が必要になるケースもあります。
歯の破折は虫歯とは異なり、突然発生することが多いため注意が必要です。
特に理由もなく被せ物が頻繁に外れる方は、歯ぎしりや食いしばりが原因となっている可能性があります。
◆ 歯周病を悪化させる隠れた原因になることも
歯周病は細菌感染による病気ですが、歯ぎしりや食いしばりも症状を悪化させる要因になります。
歯を支える歯槽骨や歯根膜には、日常的に適度な力が加わっています。
しかし、過剰な咬合力が加わると歯周組織へ負担がかかります。
その結果、歯の動揺が強くなったり、歯周病の進行が早まったりすることがあります。
また、炎症によって弱くなった歯周組織へ強い力が加わることで、さらに組織破壊が進む場合があります。
つまり、歯周病と歯ぎしりは互いに悪影響を及ぼし合う関係にあるのです。
歯周病治療を行っても改善が思わしくない場合、咬合力の問題が隠れていることもあります。
そのため、歯周病の管理では噛み合わせの確認も重要になります。
◆ 顎関節や顔の筋肉にも影響を与える理由
歯ぎしりや食いしばりの影響は歯だけにとどまりません。
顎関節や咀嚼筋にも大きな負担がかかります。
顎関節は口の開閉を行うための重要な関節ですが、過剰な力が続くことで炎症や機能障害を起こすことがあります。
朝起きた時に顎がだるい、口を開けると音がする、口が開きにくいといった症状は顎関節症のサインかもしれません。
また、咬筋や側頭筋といった咀嚼筋が緊張し続けることで肩こりや頭痛を引き起こすこともあります。
特にデスクワーク中心の生活では首や肩の筋肉も緊張しやすいため、症状が複雑化することがあります。
口腔内の問題だと思っていた症状が、実は全身へ影響していることも珍しくありません。
◆ 歯ぎしり・食いしばりに関するよくある質問
◆ 歯ぎしりは誰でもしますか
ある程度の歯ぎしりは多くの人で見られますが、強い力や頻度が問題となります。
◆ ストレスが原因ですか
ストレスは大きな要因の一つと考えられていますが、それだけではありません。
◆ 自分で気付く方法はありますか
歯の摩耗や顎の疲労感、知覚過敏などがヒントになる場合があります。
◆ マウスピースで治りますか
マウスピースは歯を守る効果がありますが、歯ぎしりそのものを完全になくす治療ではありません。
◆ 放置するとどうなりますか
歯の摩耗や破折、顎関節症、歯周病悪化などのリスクが高まります。
◆ 歯を守るために早めの対策を考えよう
歯ぎしりや食いしばりは、自覚しにくいにもかかわらず歯へ大きなダメージを与える習慣です。
歯の摩耗や亀裂、破折だけでなく、歯周病の悪化や顎関節症の原因になることもあります。
さらに、肩こりや頭痛など全身症状へつながるケースもあります。
特に睡眠中の歯ぎしりは無意識に行われるため、自分だけで気付くことは難しい場合があります。
そのため、定期的な歯科検診で歯の状態や噛み合わせを確認することが重要です。
また、必要に応じてナイトガードと呼ばれるマウスピースを使用することで歯へのダメージを軽減できる場合があります。
日中の食いしばりについても、上下の歯を接触させ続けない意識が大切です。
本来、安静時には上下の歯はわずかに離れている状態が正常とされています。
歯ぎしりや食いしばりは決して珍しいものではありませんが、放置することで歯の寿命を縮める原因になり得ます。
大切な歯を長く守るためにも、自分の噛み癖や生活習慣を見直し、必要に応じて歯科医院へ相談することが重要です。
毎日の小さな意識と適切なケアが、将来の歯の健康を大きく左右するでしょう。