BLOG ブログ

なぜ歯列矯正は保険適用外なのか?

こんにちは。
わだち歯科シニア歯科の院長玉本です。

稲沢市、あま市、清須市、などの近くの地域で、
シニアの方々やそのご家族の方々に愛され、おすすめして頂ける歯科医院を
目指しています。

予約しなくてもご来院頂けますので、ぜひいつでもお気軽にお越しください。

歯並びを整える歯列矯正は、美しい笑顔や正しい噛み合わせを得るために重要な治療ですが、日本では基本的に保険適用外とされています。そのため、治療費は全額自己負担となり、数十万円から場合によっては100万円以上の費用がかかることもあります。では、なぜ歯列矯正は健康保険の対象にならないのでしょうか?その理由と、例外的に保険が適用されるケースについて解説します。

1. 健康保険の適用基準

日本の公的医療保険制度では、「病気やケガの治療を目的とした医療行為」に対して保険が適用されます。例えば、虫歯や歯周病の治療、抜歯、入れ歯や差し歯などは、噛む機能を回復させるための医療行為とみなされるため、保険が適用されます。

しかし、歯列矯正は「病気の治療」ではなく、「審美目的(見た目の改善)」と考えられることが多く、基本的には保険適用外となっています。特に、美しい歯並びを求める動機が強い場合は、医療行為ではなく「美容医療」とみなされることが主な理由です。

2. 歯列矯正が保険適用外となる理由

(1) 矯正は「病気の治療」とみなされにくい

多くの矯正治療は、歯並びや噛み合わせの改善を目的としていますが、これが直接的な病気の治療とは判断されにくいため、健康保険の適用外となっています。たとえば、歯並びが悪くても日常生活に大きな支障がない場合、それは「医学的に必要な治療」とは見なされません。

(2) 矯正は長期間にわたる自由診療

歯列矯正は、数年単位の長期間にわたる治療が必要です。さらに、使用する装置や治療法も多岐にわたるため、標準的な治療費を設定するのが難しいという点もあります。医療保険制度は、一定の基準に沿った医療行為に対して適用されるため、個々のケースで大きく異なる矯正治療は保険適用の対象になりにくいのです。

(3) 国家財政の負担を抑えるため

公的医療保険制度は、国民全員が平等に医療を受けられるように設計されています。しかし、矯正治療は高額になりがちであり、もし保険適用にすると医療費の負担が大幅に増え、財政的に維持が難しくなる可能性があります。そのため、治療の優先度が低いと判断され、保険適用外となっているのです。

3. 例外的に保険適用されるケース

すべての歯列矯正が保険適用外というわけではなく、特定の条件を満たせば保険が適用される場合もあります。以下のケースでは、歯列矯正が健康保険の対象になることがあります。

(1) 顎変形症による矯正治療

顎変形症とは、上下の顎の成長バランスが悪く、噛み合わせに大きな支障をきたす疾患です。たとえば、受け口(下顎前突)や極端な出っ歯(上顎前突)などが該当します。こうした症状の場合、外科手術を伴う矯正治療(外科矯正)が必要となり、健康保険が適用されます。

(2) 先天的な疾患による歯並びの異常

以下のような先天性疾患を持つ場合、歯列矯正が保険適用となることがあります。

  • 口唇口蓋裂(こうしんこうがいれつ)
  • ダウン症候群
  • クルーゾン症候群
  • トリチャーコリンズ症候群
  • ゴールデンハー症候群

これらの疾患では、歯並びの異常が顎の発育や全身の健康に影響を与えることがあるため、矯正治療も医療行為として認められます。

(3) 6歳未満の成長期の特定矯正

6歳未満の子どもで、歯並びや噛み合わせの異常が将来的に健康に大きく影響すると判断された場合、一部の矯正治療に保険が適用されることがあります。ただし、ケースバイケースであり、歯科医の診断が必要です。

4. 矯正治療の費用を抑える方法

矯正治療が保険適用外であっても、以下の方法で費用負担を軽減することが可能です。

  1. 医療費控除を利用する
    1年間に支払った医療費が10万円以上(または所得の5%以上)になると、確定申告を行うことで税金の一部が還付される可能性があります。矯正治療も医療費控除の対象となる場合があるため、領収書を保管しておきましょう。

  2. 分割払いを活用する
    矯正歯科では、分割払いやデンタルローンを利用できる場合があります。一括払いが難しい場合は、クリニックに相談してみるのも良いでしょう。

  3. 矯正の種類を選ぶ
    ワイヤー矯正よりもマウスピース矯正(インビザラインなど)の方が安くなる場合があります。自分の予算や治療方針に合った方法を選ぶことも重要です。

5. まとめ

歯列矯正が保険適用外である理由は、主に「病気の治療とはみなされにくいこと」「治療が個別性の高い自由診療であること」「国家財政の負担を抑えるため」という点にあります。しかし、顎変形症や先天的な疾患の場合は、例外的に保険適用となるケースもあります。治療費を抑えるためには、医療費控除の活用や分割払いの相談など、工夫できる点も多いので、矯正を検討している方はぜひ歯科医と相談してみましょう。